2011/06/12

牛になります

ほぼ一月ぶりの日記。
6月8日
前回の日記に書いた番組がいよいよ今夜オンエアとなります。
なんと収録が終ってその晩に腸閉塞の痛みに苦しみ緊急入院、そして放送前日に退院というタイミング。

腸閉塞。胃を全摘した人にはついて回るものだそうで、昨年の7月に続いて今回が2度目。
去年は1週間の断食でなんとか早期復帰したので、今回もと軽く見ていました。
去年の暮れまではあんなに食欲もあって調子良かったのに、年が明けて間もなく食欲が落ち始め、その頃から既に軽い腸閉塞の症状が出始めたようで、そして先月12日に一気に悪化してしまいました。
今回も1週間程度の入院で帰れると思っていたのに、事態は最悪。 翌日の精密検査やら胃カメラによる処置やら手を尽くしたものの、症状は改善されることなく腸は暴発寸前の事態に陥り緊急手術となりました。
まさかの2回目の開腹手術。
手術室のベッドに横たわり「まさか1年ちょっとでまたここに帰ってくるとは思いませんでしたよ。」と言って手術スタッフの笑いを誘うほど気持ちに余裕はあったものの・・・
終ってみたら、 「人工肛門付けました。閉塞していたところは処置できなかったので、腸ろうを付けました。」と担当医からの有無を言わせぬ事後説明にちょっと絶句したのは言うまでもありません。
緊急だったから仕方ないといわれれば返す言葉もありませんでした。
人工肛門って・・・ てっきり人工的な何かをどこかに付けたのかと思って説明聞いたら、臍の横から大腸の一部を引っ張り出しただけとのこと。「紀州南高梅の梅干があると思って下さい」って言われてもすぐには自分で見ることも気が引けてしまいました。今はそこに排便袋が取り付けられ、今までのような便意はなく出たいときに勝手に袋に入ってきます。
残念なことに、トイレでスッキリ!はもう一生味わうことはできなくなりました。
食べると閉塞している腸に詰まってしまうから、口からは一切の飲食物は入れられず、栄養剤を腸に開けた穴に直接ポンプで送り込む。唯一の栄養補給手段なので、これはまさに生命維持装置。これがなくなったらもう生きていけません。
人間として最も基本的な喜びである快食快便。その内の一つは既に完全に奪われ、もう一つも今後の症状の改善次第でどうなるかわかりません。
一昨年の暮れに胃に見つかった異変。胃を全摘することになったときも、意外と取り乱すことなくすんなり受け容れることができた自分に驚きましたが、今回は更にその上を行く事態にもかかわらず、さして動揺することもなく状況を受け容れたのでした。 というか、ジタバタしたところでもうどうにもならないのです。 この状況を受け容れるしか手段がないのです。
こうやってネット上にこんなことを書いて公開することの賛否はあるでしょうけど、自分としてはこれがガス抜きになっているのだと思います。
来週から始まる新しい治療に“食べる”ことへの未来がかかっているのですが、今言えることは、間違いなく自分は今生きているということ。 まだまだ人生の半道中でくたばるわけにはいかないのですが、それは自分の意思だけで生きているのではなく、この世に生まれ出でた俺という一人の人間がその人生をかけて果たすべき役割を果たすために生かされているということなんだと思います。
体重も体力もガタ落ちし、もはや畑仕事はもとより力仕事はできない身体になってしまったわけで、苦渋の決断ながら、早々に農業引退表明をしてしまいました。
これから美味いぶどうを作って、美味いワインを作って一人でも多くの人に笑顔を届けたい!という意気込みで始めたぶどう作りですが、それがわずか2年で挫折。
こんなはずじゃなかった、と思ったところで自分の力ではどうにもならず、生かされていると思いながらも、だったらなぜこんなことに!って思うところでしょうけど、不思議とそんな悲観的な気持ちにならないのは生まれ持った楽観的性格によるものと半ば親に感謝しているのでありました。
器用貧乏と言われながらもいろんなことを経験してきました。 人生の師匠とも言える人から、男は人生の内に3回職業を変えたら終りだ、とも言われましたが、とうとうその3回目になってしまいました。
でも、自分の存在価値はそんなことでは失われません。
生かされている以上、もしかしたら自分でも気付いていない価値観でこれからの人生を生き抜けということなのかも知れません。
去年胃全摘手術を受けた後、これからはいただいた命で新たな第二の人生を創造して行こうと心に誓ったのですが、今回はその仕切り直しだと思っています。
いただいた命を全うするよう全力で生き抜きます。
当面は体力の回復を図る生活が続きますが、その先に起こるであろういろんなことを創造することが今の生きる糧になっていることは間違いありません。
多くの人からの応援をいただき、パワーをいただいています。本当に嬉しいです。
のほほ~んと生きてきたはずなのに、知らない間にこんなに多くの人に支えられてきたのかと思うと、やっぱり人間は一人で生きているんじゃないって強く感じます。
「頑張れ!」 そんな応援をいただきますが、正直なところ、もう自分に鞭打って生きることはやめました。頑張りません。無理もしません。欲張りません。でも絶対に諦めません。そして自然体で生きていきます。
やっぱり俺はみんなに笑顔の素を届けたいから、俺自身がいつも笑顔を絶やさないような生き方を続けて行きます。
大好評のワインカレーをもっと美味しくしたい!
勝沼人の大地に合うパンを焼きたい!
窯焼きピザの腕も上げたい!
うちに来たらホッとするような料理も提供したい!
多分、きっと近い将来はそんなことを中心に据えた菱山暮らしをしながら生きていくことになるでしょう。
そんなことを頭に描きながら、これからの毎日をまるで牛歩の如くゆっくりゆっくり歩んでいきます。
生きているというただそれだけのことの大いなる喜びを噛み締めながら。
あ~、スッキリした(笑)。

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